立秋(りっしゅう)から処暑(しょしょ)への季節―
残暑の中で食欲を増進したい時には
つい濃い味付けの食事にかたよりがちですね。
落語で、そば好きの隠居が最期に
『たっぷりつゆをつけて食べたかった』
という話があるように、江戸のそばの作法とは
そばの先に濃いつゆをほんの少し浸して
そばの味や香りを味あうのが粋とされていました。
その理由として、江戸時代に下総の野田で造られた醤油が水路の発達により江戸中にたくさん出回っていたからだと言われています。
また、幕府が開かれた当時は、下級武士や職人など、力仕事をする人が多く、武家屋敷の男所帯では不器用さも手伝い、必然的に濃い味付けが支持された様です。
さらに、美味しいだしづくりには手間と費用がかかるため、濃いつゆで消費を抑えようとした台所事情が絡んでいたとする説もあります。