外川の集落は高台にある。南側にある外川漁港へは急な坂道を降りる。どの坂道からも漁港が見降ろせるドラマチックな景観である。実際にこれまで様々なドラマでこの街が舞台となっているらしい。外川駅のレトロで可愛い駅舎は私もテレビで何度か観ている。あのNHKの朝のドラマ「澪つくし」もこの街が舞台だそうだ。駅を降り、潮騒が聴こえ、潮の香りが漂う路地を歩くと、まるでドラマの主人公、いや、脇役になったような気分を味わえる。
その天ぷらラーメンは、金兵衛食堂という名前の店。外川の駅から徒歩5分くらいだった。パソコンで印刷した地図を頼りに歩いていたら、見当たらない。それもその筈で、のれんを降ろしていたのだ。何度か店の前を往復してごみ箱に書いてあった「金兵衛食堂」という文字でやっと発見した。それほど普通の民家と区別がつかない店舗だったのだ。オモシロいことに、ごみ箱に電話番号(5385)が記してあり、そしてルビが「ごみばこ」となっている。なるほど、5385は確かにごみ箱であり、覚えやすい。(笑)
さて、店を発見したのはいいとしても、のれんが外してあるということは、もう閉店してしまったのだろうか。時刻は2時を少しまわったところだ。せっかく来たのに駄目だったのか。焦る。銚子にはこれからそう何回も来ることが無さそうなので、絶対に天ぷらラーメンを食べてゆきたい。ダメ元で叫んでみる。すると、入口の脇から返事をする女性の声がする。「もう終わってしまったのですか?」とその声のほうに再び叫んだら、厨房のほうから女将さんと思しき女性が顔を出し、「どうぞ。やってますよ。」と笑顔で迎えてくれた。
後で分かったことには、同店は、殆ど出前専門の店で、一応昼の12時頃から1時間はのれんを出しているが、それ以降はのれんを降ろしてしまうのだという。あんまりお客さんが入ると、出前を頼んだ人に迷惑をかけてしまうので、ということだ。長い間地元に愛されている店ならではの方針だ。それはネットにもそう書いてあった。もっときちんと下調べをしてから来るべきだった。危うく食べないで終わってしまうところだった。
店内の客は私だけだった。店内は比較的綺麗にしてあるが、いかにも田舎の食堂という風情が漂っている。天ぷらラーメンを注文して出てくる間、女将さんとお話しをさせて頂いた。その後、出前に行っていたご主人が戻ってこられ、そして再びお話をして頂く。非常に気さくな方だ。