おそばの豆知識
おそばの豆知識
おそばに関する素朴な疑問、また、よくある質問を集めてみました。
それぞれの質問文をクリックすることで回答が表示されます。
藪そばと更科そばの違いは簡単にいえば色の違いですが、その原因は製粉方法の違いです。蕎麦はもともと黒い殻をかぶっています。(いわゆるソバガラ)。これを挽き込むか、否かによってそば粉の色は変わってきます。
つまり田舎風にソバガラまで挽き込んでしまえば藪そばに使う黒いそば粉ができ、この部分を除いて製粉すれば更科そばに使う白いそば粉ができるのです。
その製粉方法についていえば、あらかじめソバガラを取り除いて「抜き」という状態にしてから、軽く挽けば中心の白い柔らかい部分が真っ先に粉になるので、この段階でできたそば粉を一番粉といい、更科そばをあつらえるそば粉ができるのです。そういう意味では更科そばの方が上等なそばといえるかもしれませんが、そばはそれぞれの思いで食べるもの。風味の違いはまた好みの違いでもあります。
ソバは中国、モンゴルなどの中央アジア、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが主な原産地として知られています。作物としてのソバは世界各地で栽培されており、国によっては重要な食料源の一つになっています。現在栽培されている種類は、日本をはじめ、中国、ソ連、カナダなど主要な栽培国では圧倒的に普通ソバが多くネパール、ブータン、北インドなどのヒマラヤ諸国ではダッタンソバもかなり栽培され、食用に供されています。
普通ソバに焦点を絞れば、日本のように麺に加工して食べる国は中国や朝鮮、ブータンぐらいしかありません。世界で最も広範囲に、しかも古くから親しまれている食べ方はそば粥(ロシア語でカーシャ)で、ソ連をはじめ、ヨーロッパ各国では日常的な料理の一つとなっており、むき実の全粒かまたは引き割り(荒挽き)ソバを原料としています。
これでおわかりの通り、粥で食べるのと日本式にざる主体で食べるのとではそばの香りを楽しむ違いがあります。国内産ソバは現在、数多くの品種が改良、開発、登録され、日本のそば料理事情に合わせた開発競争の結果、商品化されていますので、日本人の嗜好にあった品質化という意味で良質なものが多いといえます。
「引っ越しそば」は、江戸時代中期頃から、引っ越してきたとき家主や近隣に引っ越しの挨拶としてそばを配るようになったという江戸を中心とした習わし。近くに越して来たことになぞらえて、「あなたのおそばに」あるいは「細く長くのお付き合い」といった語呂合わせと、古くからある「蕎麦振る舞い」の縁起担ぎの意味も併わ せた風習として定着したようです。大阪にそういった風習がないのは、江戸はそば、大阪はうどんが普及していた実情からでしょう。
二八そばの解釈をめぐっては、さまざまな議論がされてきていますが、「二八、十六」の語呂で一杯十六文とする代価説と、そば粉八割につなぎの小麦粉二割で打ったそばを表したものとする混合比率説とに大別されます。現在は時代背景から、「二八、十六」から一杯十六文とする代価説より後者の方がよく知られています。
そばの実や葉には、ソバポリフェノールとして広く知られているルチンが含まれています。ルチンは出血性諸病や血圧降下作用に効果があるといわれ、毛細血管を強化する働きや、血管の老化に伴って血管の外へしみ出していこうとする血液の流れを防ぐなど、血管の透過性の防止、高血圧をはじめ動脈硬化などを予防する働きがあります。ルチンのこの働きは、ビタミンCと一緒にとると更に効果的で、トマトなどのビタミンCとそばを同時にとれば、中高年の弱くなった血管の壁を守ることができるでしょう。
そうめんとひやむぎは、本来はその製法上で大きな違いがありました。そうめんは、小麦粉を食塩水でこねてから、油を塗りながら、手で細く延ばして作る手延べの麺で、これに対しひやむぎは、小麦粉を食塩水でこねるまではそうめんと同じですが、麺線にする段階でうどん同様、麺棒を使って薄く延ばしてから包丁で細く切る手打ちの麺です。ひやむぎの製法がうどんとよく似ているのは、その起源が鎌倉時代に中国から伝えられたとされる 「切り麦」だったためといわれています。当時は茹でてから冷たいままで食べるものを「ひやむぎ」、熱くして食べるものを「あつむぎ」あるいは「うどん」と呼んで区別していました。そうめんとひやむぎの区別がはっきりしなくなったのは、明治時代に製麺機が発明されて、機械打ち麺が出回るようになったためです。
更に近年では、乾燥技術が格段に向上したことによって、手延べのひやむぎやそうめんまでも一部の工程を機械化した手延べと称されるものが商品化されるようになり、実際にはそうめん、ひやむぎ、うどんを製法上で区別することは困難になってきています。
ソバの代表的な産地が関東から北の信州、茨城、山形などで、うどん作りに欠かせない良質の小麦や塩の産地が瀬戸内海などの関西から西に多かったことが最大の要因でしょう。
昔から江戸っ子はそば、大阪人はうどん好きといわれ、現在も東京は蕎麦屋が、大阪はうどん屋が多いという図式にもなっています。これにちなんで、そばは辛汁のつけ汁(濃いつゆ)、うどんは汁ごと吸える甘汁(薄いつゆ)といった東西のつゆの嗜好の違いにも現れてきています。
前々項でそうめんとひやむぎの違いで手打ちと手延べの違いについて記してありますが、「さぬき」といえば手打ち、「稲庭」は手延べ 製法で知られています。手打ちが麺棒で徐々に薄く延ばすのに対し、手延べは麺棒を使わないで 麺生地を延ばす手法です。但し延ばし方の違い以外にさぬきは一般に太いうどん、稲庭はどちらかというとひやむぎに近い太さのうどんです。
乾めんですから 一般に種類によらず長期保存が可能ですが、全国乾麺協同組合連合会では、乾麺類の貯蔵試験を各方面で実施した結果、そば、うどん、きしめんは1年、ひやむぎは1年半、そうめんは2年をそれぞれ目安とするよう指針を出しています。これは、貯蔵変化が食味に与える影響が、太いめんはマイナスに、細いめんはプラスにと正反対に現れることが認められ、細いめんの方が食感が向上するとしています。但し、貯蔵条件として良好な包装状態で、常温で日が当たらず、乾燥しすぎない場所での保管をとのことです。
小麦粉は、一般的に原料小麦粉中に締めるたんぱく質の量によって、
強力粉… 11.5~14.0%(用途は主にパン用)
準強力粉… 10~12.5%(用途は主にパン、スパゲッティ、中華麺用)
中力粉… 8~10%(用途は主に生麺、茹麺、乾麺、菓子、その他用)
薄力粉… 6~8%(用途は主に菓子、その他用)と分類されます。つまりこのたんぱく含有率の違いで食用の用途が分かれます。
そもそもめんは、小麦粉と水と食塩で作るのが基本ですが、塩を加えなくてもめんを作ることはできます。逆にいえば、これだけ単純な原料構成でも作り方によって、千差万別の味の違いが出るのですから、良い小麦粉(そば粉)にうまい塩と麺作りに適した水があればうまいめんはできるのです。
食塩の働きとしては
A. グルテンを引き締め(収れん作用)、生地の弾力性を増加させる。
B. 生地の乾燥を防止する。
C. 生地の発酵を抑制し、防腐する。
D. 温度(気温)の変化による生地への影響を調節する。
E. 風味、食感をよくする。
F. 半生、乾麺の場合は水分の内部拡散を促進させる。
従って、そばもうどんも塩なしでも作ることができますが、麺独特のコシは出ませんし、塩は風味、食感をよくする働きもありますので、味の点でよくなるとはいえません。但し、名古屋の味噌煮込みうどんなどの郷土料理のように生うどんを単独で茹でずに、煮込みうどんにする調理のように煮汁に塩が溶け出して塩辛くならないように塩を加えずに打つうどん料理もあります。
また、生めんですと塩が入っていませんので、消費期限が更に短くなります。
当コーナーの回答欄の一部は、「そば・うどん百味百題(社団法人日本麺類業団体連合会・企画)」及び「蕎麦の世界(新島繁、薩摩夘一共編)」(いずれも株式会社柴田書店刊)、「奥義霧しな流そばの道」(株式会社霧しな刊)から抜粋しました。